対馬とは九州と、朝鮮半島の間にある島である。対馬の織り方は朝鮮の影響を非常に受けている。対馬麻についての文献、資料はほとんどない。たまたま読んだ民俗学者宮本常一氏の「女の民俗史」からやっと対馬麻のことを見つけることができた。それによると、素材は麻と棉で織られている。対馬では家の周りに麻坪といって麻ばかり作る畑があった。当時は、村の中に店を置くことは禁じられていた。城下町の厳原までいかなければ藍を染める紺屋が無かった。貧しい村人たちは町まで行く時間や経済的な余裕も無く、自分たちで藍に似たような植物染料(山藍の葉など)を探し染めた。昭和35年以降は、対馬麻を織る人も着る人もいなくなった。大変貴重な布から1枚のコートを作りました。
マリア書房 襤褸に生きる より
2012年9月2日(日)