個展期間中に何度も足を運んでくれたある品の良いおばあちゃまから、こんな美しい襤褸の端布を戴いた。展示を見ていると、差し上げたくなったという。時間があったら、家まで来て、下さいますかといわれた。今日は、もう、新幹線に乗って帰るだけだったので、朝、伺いますと約束をした。なんとかバスに乗り、家にたどり着く。掃除もしていないくて、ごめんなさいと、おっしゃる。とんでもない、きれいに、塵ひとつ無い。2階に上がると、何十年もかかって収集したという、木綿の縞、絣、藍無地が、行李にきちんと並べられている。やたら織り、丹波布もある。独り暮らしで、娘さんも、誰も、興味がないという。お好きなだけ持って行って下さい。買わして下さい。と言うと、それは駄目です。困った。要らない人にはゴミ同然だが、価値が分かる人には宝の山。お金で売ってくれるなら、良いのだが。
では、孫の服を作るだけの分だけ分けて下さい。とお願いした。少しだけ。又、来年も、個展の予定が入っていますから、それまで、お元気でいてくださいと約束して玄関を出た。優しい、品の良いおばあちゃまは笑顔で手を振って見送ってくれた。
2013年3月28日(木)