私の近所のおばあちゃんは、凄い知恵袋を持っていた。
いつも立ち話1時間。
和裁の達人。昔は芸者さんの着物を仕立ていたそうだ。
「その部分が、上手くいかないと、着るたびに何回でも着にくいのよ。
でも直しは1回。」
私が庭の花の手入れをしていると
「お花があるとお日様はひと休みするのよ」
「使った物は、元に直ぐに戻す」
「人を悪く言うとそれがそのまま返ってくる」
辛い話も聞いた。
長男を3歳で亡くした話。
戦時中、配給の缶詰めを食べて、疫痢になった。
復員したご主人から「お前が殺した。お前が殺した」と何度も言われた。
辛かったと。
ご主人が職を無くし、お金に困り、裕福な実家にお金を二人の娘を連れて借りに行った。
母親が「貸せない!」と言われ、帰り娘の手をぎゅーと握り泣きながらホームに立った。
「私には、子どもが、困っている時に、あんな事絶対に出来ない」
と声を震わせて言っていた。
そのおばあちゃんが、5日間くらい姿を見せなくなった。
娘さんが、「おばあちゃん、脳出血で亡くなった」
享年86歳。
もう10年にもなる。
何時も仕事をしていると、おばあちゃんの言葉を思い出す。
使った物は元に直ぐに戻す。
直しは1回。