トレドから、マドリードアトーチャ駅に、6時に着く。
プラド美術館の前を通りペンションに帰るつもりだったが、
「そうだ、6時半から、入館が無料になる時刻だ。」
もう一度ゴヤを見たかった。
ゴヤに会いたかった。
美術館に入り、ゴヤの展示されている部屋に直行。
奥にあるゴヤ晩年の作品群の部屋が、先日、退館の時間を迫られ見ることが出来なかった。
「5月2日」 1809年5月2日、マドリードの民衆がナポレオン軍に対抗して蜂起した図。
「5月3日」 その翌日マドリード民衆の銃殺の場面を描いた図。
ゴヤ晩年の作品群「黒い絵」。「悪魔の宴」
「自画像」
震えるほどの感動を受けた。
これらの大作は、50年ほど前に、故藤井哲画伯が、苦労の末、日本人で始めて模写の許可を
許されてた作品群。
1970年。日本でスペイン美術展記念「藤井哲ゴヤ模写展」後援朝日新聞。
東京松坂屋で開催され、
当時、NHK,TBS 美術出版社などで、話題にされた。
朝日新聞新聞社は藤井哲氏のゴヤ模写展をこのように評している。
「この模写は記録的な模写と違い、作画意図や構図、発色など絵画制作の研究 を目的とするもので
絵画のシミ、ひび割れまでは克明に写し取ってはいないが、重厚な色彩、ダイナミックな筆触
鬼気迫る感情表現などかなり忠実に写し取っていて原作の迫力を伝えている」と書いてある。
現在、これらのゴヤの大作模写絵は、藤井哲画伯の眠る、岡山県新見市の美術館に寄贈されている。
巨匠ゴヤの作品に会えたことで、今回の旅の意義はもう十分にあったと
思った。