倉敷民芸館の外村吉之助先生の講演のお話によると、「木綿は人類に与えられている最高の存在である。生まれてから死ぬまで私たちは木綿の厄介になっております。赤ん坊が生まれたら木綿のおむつや肌着を着せます。木綿は肌さわりも良く汗を吸い、垢を取ります。木綿は洗濯に強く、持ちが良いし、藍と結合して一層強化される。木綿はさまざまな、お役に立ったあとは雑巾になります。バケツの中で揉まれ絞られて板の間や廊下を拭きぼろになって生命を終ります。驚くべきことに道元禅師は「雑巾は浄巾」と申されました。浄は清浄の浄であります。木綿がこの世に出てから人間の生活の実用に直結して辛苦に耐え、おわりはボロになって捨てられます。これこそが犠愛の存在である」と話されている。
マリア書房 襤褸に生きる より
2012年9月14日(金)