絣について
絣のルーツは、インドから15世紀後半に琉球を経て、全国に広がった。昔の庶民が色や素材の束縛を受けながらも多年の試行錯誤と知恵により美を可能な限り追求したものであり、織物の中では一番高度な技術が必要とされる。よく、現代の人に誤解されている絣で、モンペや野良着として使われたとの誤った印象がある。絣は最初から野良着として織られたものではない。カスリはその家に伝わる財産的な外出着であり、田植えの時には、娘をお披露目する早乙女たちの晴れ着でもあった。嫁入り支度に一生涯着用するものとして持参した。何代も着て古くなった後に布団、野良着、裂織り、雑巾、おむつなどに仕立て直されていったものである。絣を着ると日本の暗い家屋や緑の田んぼの中で一層美しく見えるので、みんなで「遠く美人」と言って誉めあった。日本人の女性を美しく見せる絣である。
マリア書房 襤褸に生きる より
2012年9月11日(火)