やりたかったのです。
この構想2年かかりました。
広尾でのある若いカップルの言葉からでした。
ギャラリー個展に入って来た二人が襤褸の服を見て、
「凄い!超良いよ!カッコいい!」
でも、プライスを見ると戻しました。
「とっても手が出ない、、、、、、、」
この時私は思いました。
襤褸は高い。安くはない。一部のマニアしか買えない。
襤褸の希少価値から、考えると、こういう値段にはなってしますのだが、、、、、。
これからの若い人達に着て貰うには、どうしたらよいのだろう。
この庶民の文化である襤褸は、廃れていくだろう。
よし、Tシャツ感覚で、買えるよう、本物と見劣りしない染色ができないものだろうか。
知人のアパレルのデザイナーに持って行き、染色してもらったが、
結果はインクジェットのひどいものだった。
今の技術ではこれ以上は出来ないとの事。
もし、やっても、ものすごく費用がかかるとの事でした。
一旦は諦めました。
出来っこない。
しかし、偶然に知り合った、横浜ギルダの職人さんが鯉のぼり、文字奉納旗と、
高度な捺染技術で、本物を超える良いものが出来たではないか。
昨年、襤褸の布団を本藍捺染工場に持ち込んだ。
うちの技術では出来ますよ。自信満々だった。
そして、1ヶ月後。
期待とは反対に、思っていた物とは全然違っていた。
本藍の技術で染色したのを、無理を承知で
工場を他に代え、化学染料でやってみた。
何度も何度も打ち合わせ。試行錯誤。
50年もやっている染色技術の職人さん。
シルクスクリーンの版も11枚に増やし、何枚も版画のように重ねた。
後は、もうベテランの職人さんにお任せした。
数ヶ月後
「出来ました!今度は気に入って貰えます!」と連絡があり。
数日して、棒の様にビニールで括られた、布が送られて来た。
開けるまで、ドキドキものでした。
開けてみて驚きました。
「やった!とうとうやった!」
襤褸カットソー捺染染めは、私のどうしてもやりたかった事でした。
今日、襤褸好きの友人と会い、出来た作品を見てもらいました。
凄い良いものが出来ましたね。と絶賛されました。
しぶとく頑張って見るものですね。
2週間まえに、ひき逃げ事故で心友を亡くし、パリから3日間でトンボ帰りした、
傷心の次男に伊集院静さんの素晴らしい言葉をメールしました。
別離が教えてくれた事。
悲しみにあった人は慈しみという大事な力を得るのです。
辛い別れから、教えられる事がある。
「別離を経験した人にしか見えないものがあると説く」
17歳の弟を海の事故で亡くし、女優の夏目雅子さんを27歳の若さで病死した。
「苦しみ、哀しみを体験した人たちは身体のなかには、別離した人びとが何時も生きていて、
その人の生きる力になっています。
だからこそ、懸命に生きなければならないのです。
私は「さよならが与えてくれた力」を信じています。
「本当に、さよならの力なんてあるのか、私はこんなに悲しいのに。」そう思っている人にこそ、言いたい。
確かに悲しみからなかなか抜け出せない。
でもこんな私でも時間がたつにつれ、笑える日も来ました。
それだけは断言出来る。
「世の中には、人と死別し辛い思いをした人があふれている。
だけどそういう人たちが再びまえを向き歩き始めた時には、
そんな思いをしていない人とは違う、何かの力がついています。
少なくとも他人の不幸に手をさしのべる人になっている。
悲しみにあった人間は、人間への慈しみという大事な力を得るのです」